チェンソーマン レビュー

作者: 藤本タツキ / ジャンル: アクション・少年 / 出版社: 集英社

更新日: 2026年3月25日

★★★★☆

作品データ

巻数既刊19巻(第二部連載中)
連載誌週刊少年ジャンプ → 少年ジャンプ+
アニメあり(テレビ東京系 / MAPPA制作)

どんな作品?

借金まみれの少年デンジは、チェンソーの悪魔ポチタと共に悪魔を狩って暮らしていた。裏切りにより命を落とすが、ポチタと融合して「チェンソーマン」として蘇る。公安のデビルハンターとなり、さまざまな悪魔と戦うことに。

一見するとシンプルなバトル漫画のように聞こえるかもしれない。だが、この作品の本質はバトルそのものではなく、「普通に生きたいだけの少年」が非日常に放り込まれる残酷さと滑稽さにある。藤本タツキという作家は、読者が期待する方向と真逆に舵を切ることに全力を注いでいるとしか思えない。

「食パンにジャム塗って食べたい」「女の子とデートしたい」——デンジの動機はいつだって馬鹿みたいにシンプルで、だからこそ胸に刺さる。

ここが面白い

  • 予測不能な展開 — 藤本タツキ先生の真骨頂。「え、ここでそうなる?」の連続。王道少年漫画のお約束を裏切りまくる。味方だと思ったキャラが退場し、死なないだろうと思ったキャラがあっけなく散る。物語に安全圏が存在しない恐ろしさがある。
  • デンジのシンプルな動機 — 「普通の暮らしがしたい」「食パンにジャム塗って食べたい」。壮大な目標ではなく素朴な欲望で戦う主人公が逆に新鮮。世界を救うために戦う勇者ではなく、朝ごはんを食べるために命を張る少年。そのギャップが、シリアスな場面にも不思議なユーモアをもたらしている。
  • 映画的な演出 — コマ割りや構図が映画の手法を取り入れていて、マンガなのに映像を見ているような迫力がある。闇の悪魔との対峙シーンは、見開きだけで息が止まる。タランティーノやホラー映画のオマージュが散りばめられていて、映画好きほどニヤリとする仕掛けが多い。
  • マキマさんの存在感 — 第一部のキーパーソン。優しくて怖い、味方なのか敵なのかわからない。彼女の正体が明かされた時の衝撃は忘れられない。読み返すと序盤から伏線が張られていたことに気づいて二度驚く。
  • 悪魔のコンセプト — 「恐怖が強いほど悪魔も強い」という設定が秀逸。銃の悪魔、闇の悪魔、戦争の悪魔——人類の根源的な恐怖がそのまま敵になる。この設定により、バトルが単なる力比べではなく概念的な戦いになっている。

第一部と第二部の違い

第一部(公安編)は、公安のデビルハンターとして戦うデンジの物語。ハイテンポで容赦なく、重要キャラクターが次々と退場する緊張感がある。全体を通じてマキマという存在が物語を支配しており、最終盤の怒涛の展開は漫画史に残るレベル。

第二部(学園編)は、舞台が学校へ移り、日常パートの比重が増えた。デンジの正体がバレるかどうかのサスペンス、新ヒロインのアサ(戦争の悪魔・ヨル)との関係性など、第一部とは異なる軸で物語が進む。テンポは第一部より緩やかだが、その分キャラクターの内面描写が深くなっている。

第一部が「ジェットコースター」なら、第二部は「お化け屋敷」。どこで何が飛び出すかわからない不穏さを楽しめるかが、第二部の評価を分けるポイントだろう。個人的には、デンジの成長(あるいは成長しなさ)が描かれている第二部にも大きな魅力を感じている。

こんな人におすすめ

  • 王道ではないバトル漫画が読みたい人
  • 予想できない展開を楽しみたい人
  • 映画好きな人(映画オマージュが多い)
  • ダークな世界観が好きな人
  • 「主人公補正」のない漫画が読みたい人
  • 絵の迫力や見開きの演出に痺れたい人

まとめ

第一部の衝撃的な展開はもちろん、第二部で新たに始まった学園パートも先が読めない面白さ。藤本タツキ先生にしか描けない唯一無二の作品。読者の予想を超えてくる漫画を求めているなら、これ以上の作品はない。

ただし万人向けではない。グロテスクな描写も多いし、好きなキャラがあっさり消えることもある。それを「理不尽」と感じるか「リアル」と感じるかで、この作品の評価は大きく変わる。覚悟を持って飛び込んでほしい。その先には、他の漫画では味わえない読書体験が待っている。

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